自民党新憲法草案(6)

第4章(国会)の改正は小幅で,国会制度の大枠はほとんど変わらない。
注意すべき点は,内閣の解散権を明記したこと(54条),大臣の出席義務緩和(63条2項),政党条項の追加(64条の2)に加えて,定足数条項の変更がある。

56条2項 両議院の議決は,各々その総議員の3分の1以上の出席がなければすることができない。

「各々その総議員の3分の1」という条件は現行憲法と変わりないが,現行憲法56条は,こうなっている。

56条 両議院は,各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ,議事を開き議決することができない。

つまり,自民党草案によれば,議決の定足数は「3分の1」で変わらないが,議事を開くための定足数は憲法で定めない,ということで,これは,一部野党の審議拒否によって議院運営が混乱・停滞することを嫌う「与党の論理」によるものだと考えられる。
しかし,憲法において定めておくべきことは,与党か野党かに関わらず「みんなで話し合って決める」ことを保障するための条件であるはずだから,少数意見を代表する国会議員にも審議に参加してもらうことを前提に考えなければならない。その意味で,議事を開くための定足数を憲法事項から外すことは,国民主権の理念に逆行するものではないかと思う。
いま以上の国会空洞化を促進するような改憲には,賛成できない。

尚,第5章(内閣)も,内閣の法案提出権を明記したこと(73条)のほかには特に大きな変更がなく,統治機構の制度改変に積極的な改憲案ではないことがわかる。
これに対して,民主党の「憲法提言」には,行政監視院の設置,憲法裁判所の設置,国民投票制度の拡充,国家緊急権の明示,議員と官僚の接触禁止などが含まれ,この点では,民主党のほうが「積極改憲派」ということになりそうだ。