2005-01-01から1年間の記事一覧

自民党新憲法草案(3)

第3章の「権利章典」は,近代憲法の「核心」であって,改憲論議においても,まずこの部分をしっかり検討した上で,諸権利の実質的な保障のためにどのような制度・機構が必要であるかを構想し,それを他の章に反映させる順序で考えられるべきではないかと思…

自民党新憲法草案(2)

第1章「天皇」については,一部語句の修正(例えば「官吏」→「公務員」),条文の統合や並べ替えがあるだけで,内容的にはほぼ変更がない。国事行為の範囲・内容も,現行憲法を踏襲している。但し,衆議院の解散については,第4章「国会」で「内閣総理大臣…

自民党新憲法草案(1)

10月28日,自民党の新憲法草案が発表された。改憲を党是とする自民党も,条文形式の草案を発表するのは今回が初めてのこととなる。早速,右からは落胆,左からは批判の声が上がっている。まずはその内容を確認し,問題点を整理したい。前文から順に見て…

11月の新刊

保阪正康『昭和天皇』 中央公論新社(isbn:4120036693)上野千鶴子『脱アイデンティティ』 勁草書房(isbn:4326653086)ノーム・チョムスキー『チョムスキー,民意と人権を語る』 集英社新書(isbn:4087203190)エドワード・W・サイード『オスロからイラク…

靖国参拝(2)

小泉首相の靖国参拝は,大阪高裁違憲判決の直後ということもあり,予想通り,「私的」であることを強調するものとなった。今回の参拝を「私的」と断じていいかどうかについてはまだまだ議論の余地があると思う。しかし私は,とりあえずここまで小泉首相を追…

選挙制度(3)

ドイツの「大連立」が決まり,比例代表制を中心にした選挙制度のマイナス面が問題になる中で,イタリアはなんと,下院の選挙制度を「完全比例代表制」に戻すことにした。 イタリアの場合は,左翼民主党(元イタリア共産党)が,「比例代表制は左派の分裂を助…

靖国参拝違憲判決

靖国訴訟の大阪高裁判決は,首相が政教分離原則を蔑ろにすることについて,これを認めないとする裁判所の姿勢を明確に示したものである。いかに多くの国民から支持される政府であっても,適正な手続を経ることなく「なんでもあり」で突進・暴走することは,…

選挙制度(2)

民意を議会に正確に反映させることのできる比例代表制については,多党制に結びつきやすく安定した政権が作りにくいとの批判がある。まさにいまドイツで起きていることが,その好例となる。与党連合(社会民主党+緑の党)も保守系野党連合(キリスト教民主…

選挙制度

この9月に日本とドイツで行われた総選挙の結果をみると,やはり選挙制度について考えたくなる。日本は小選挙区制を基本とする「小選挙区比例代表並立制」(衆議院)で,ドイツは比例代表制を基本とする「小選挙区比例代表併用制」(連邦議会)。名前はよく…

10月の新刊

森達也・森巣博『ご臨終メディア 質問しないマスコミと一人で考えない日本人』 集英社新書(isbn:408720314X)福田和也『皇太子と雅子妃』 文春新書(isbn:416660466X)安倍晋三『国家』 文春新書(isbn:4166604651)松本善明『日本共産党に未来はあるか』 …

共謀罪に反対する市民の集い

話し合うことが罪になる!! 共謀罪の新設に反対する市民と議員の集い 政府・法務省は、国会議員、市民、法律家、表現者、マスコミなどの強い批判で二度も廃案になった共謀罪新設法案を今特別国会に再上程しようとしています。共謀罪は長期4年以上の刑罰を科す…

在外選挙権

最高裁が「憲法の番人」として職責を果たした。こういう事例が増えれば,憲法裁判所を設立する必要もなくなる。 海外に住む日本人に国政選挙の選挙区での投票が認められていないことをめぐる訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・町田顕長官)は14日…

9・11総選挙

出口調査によれば「自民307」だという。歴史的圧勝だ。「誰がやっても同じ」「どうせ何も変わらない」と政治に対して諦めていた人たちが,少なくとも郵政民営化に関しては,小泉なら「やってくれる」「実現する」と期待を持つに至った。その「具体的な変…

イラクからの撤兵

今朝の東京新聞。 防衛庁は12月に期限切れを迎える自衛隊のイラク派遣が延長された場合,来年1月に送り出す部隊を陸上自衛隊東部方面隊(東京都練馬区)とする方針を固め,要員選定などの準備を始めた。東部方面隊は首都防衛を理由に海外派遣の対象外とされ…

9月の新刊

稲葉振一郎『「資本」論 取引する身体/取引される身体』 ちくま新書(isbn:4480062645)高畠通敏・五十嵐暁郎『平和研究講義』 岩波書店(isbn:4000280384)新藤宗幸『政治とは,なんだろうか』 岩波書店(isbn:4000236555)桜井均『テレビは戦争をどう描い…

マニフェスト(2)

【雇用・経済】 (自民党) 国際的に見ても公正なM&Aに関するルールを早急に整備する。 競争政策の充実。 イノベーションを通じた競争力ある産業群の創出。 各世代に応じた職業能力開発基盤の整備。 フリーター・ニート等の増加傾向を反転させるため,「…

マニフェスト

各政党のマニフェストから,気になる部分を抜粋する。【憲法】 (自民党) 11月15日までに憲法草案を策定する。 「憲法改正国民投票法案」「国会法の一部改正案」の早期制定を目指す。 (民主党) 「憲法提言」を国民に示し,対話を進める。 (公明党) 「加…

新しい人よ眼ざめよ

「新しい社会のつくり方」について考えるための参考文献リスト 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』日経BP社(isbn:4822244644) 『社会起業家 社会責任ビジネスの新しい潮流』岩波新書(isbn:400430900X) 『社会起業家 「よい社会」をつく…

岩波ブックレット

岩波書店の小冊子シリーズ「岩波ブックレット」の最新刊として,『憲法を変えて戦争へ行こうという世の中にしないための18人の発言』(isbn:4000093576)というやや長いタイトルの本が発売されていることは,岩波書店としては破格の(おそらく『広辞苑』並み…

「新しい社会のつくり方」

田中優『戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方 エコとピースのオルタナティブ』(合同出版 isbn:477260345X)を読んだ。 これはタイトルにもある通り,「新しい社会のつくり方」を書いた一種の「How to 本」で,思想書や理論書の類ではな…

8月の新刊

小林武『早わかり日本国憲法』 かもがわブックレット isbn:4876998949二宮厚美『憲法25条+9条の新福祉国家』 かもがわ出版 isbn:4876998868高橋哲哉『国家と犠牲』 NHKブックス isbn:4140910364市野川容孝・小森陽一『変成する思考 グローバル・ファシ…

(転載)

●第3回「市民憲法講座」 自民党「改憲要綱」を読む お話:豊 秀一さん(朝日新聞社会部記者) 7月7日に自民党の新憲法起草委員会(委員長・森喜朗元首相)の要綱が発表されました。今回は、メディアから憲法問題や人権問題などで貴重なご意見を発言し続け…

自民党新憲法要綱

7月7日に発表された自民党の新憲法要綱をみると,3月の「中間報告」に比べて,「穏健」な改憲案となっていることがわかる。党内「復古派」と「協調派」の力関係に,少し変化があったのかもしれない。 【前文】 国の生成(自然,文化,和の精神,天皇)と…

差別表現

先日,自由が丘のある飲食店で,「2人組の外国人に注意」と大きく書かれたチラシが店内に貼ってあるのを見た。近隣で発生している,商店のレジ金銭を狙った窃盗事件の「犯人像」を示したもので,書き手は碑文谷警察となっている。 外国人でもないのに,なに…

7月の新刊

大塚英志 『憲法力 誰にでもできる日本国憲法の護り方』 角川書店 isbn:4047100056 美輪明宏 『戦争と平和 愛のメッセージ』 岩波書店 isbn:4000236482 小田実・木戸衛一 『ラディカルに〈平和〉を問う』 法律文化社 isbn:4589028557 仲正昌樹 『二つの〈戦…

新刊情報

憲法24条を活かす会・編『個人・家族が国家にねらわれるとき』 (岩波ブックレット isbn:4000093533)<目次>【はじめに】 男女平等や個人の尊厳を否定する家族でしあわせ? 【Q&A】 高齢者の介護は家族だけが担わなければならないのですか? 結婚したら…

非武装平和国家

井上達夫の「挑発」に乗って,もう少し9条について考えてみる。 日本国憲法 第9条 1.日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを…

絶対平和主義

『論座』6月号に掲載された長谷部恭男,井上達夫,小熊英二の憲法論のうち,最も「おもしろかった」のは,井上達夫の『挑発的!9条論 削除して自己欺瞞を乗り越えよ』だった。 護憲派に向けられた「挑発」の一部を紹介。 自衛隊・安保の現実に依拠しながら…

『論座』

現在発売中の『論座』6月号が,「クール!な憲法の論じ方」という特集を組んでいる。目次から拾うと,長谷部恭男『日本の立憲主義よ,どこへ行く?』,井上達夫『挑発的!9条論 削除して自己欺瞞を乗り越えよ』,小熊英二『改憲という名の「自分探し」』の…

憲法記念日

主要6紙の社説を読み比べてみる。 はっきりと「改憲派」の側に立つのは読売・産経・日経の3紙。これに対して,朝日は改憲論議に疑問符を付け,毎日は条件を課してブレーキをかけようとする。最も「護憲派」寄りに立つのは東京新聞だ。それぞれ要点を整理し…