鳩山政権の危機的状況について

長らく自民党が政権を担い、野党は批判勢力として存在する時代が続いた。野党は「いちど私たちにやらせてみてください」と繰り返し政権交代を主張してきた。昨年、ついに「いちどやらせてみよう」ということになった。まあ、初めてのことなので、いろいろ不…

民社国連立政権

今回の政権交代を政党政治史的に見れば、1998年以来11年ぶりの、社民主義勢力を含む連立政権の誕生ということになる。1998年とは、「自社さ連立」が解消された年である。内閣としては、1996年11月に終了した第一次橋本内閣以来13年ぶりに、社会党−社民党系の…

総選挙2009

いま投票してきた。結果が判明する前に書く。 政権選択選挙と言われ、マスコミ報道の通り、民主党−鳩山政権が誕生することはほぼ間違いない情勢の中、何が争点だったかと振り返れば、おそらくマニフェストの中身ではなく、安倍−福田−麻生と引き継がれてきた…

憲法記念日

憲法改正論議が一時より下火になる一方で、専守防衛+国際協力の範囲内では軍事への依存が広く容認され、9条の解釈改憲に抵抗する力はむしろ弱まっている。また、「世襲」国会議員に対する立候補制限は参政権の危機、法律の専門家ではない裁判員に合わせて裁…

「田母神論文」

いわゆる「田母神論文」について、新聞やテレビが一斉に批判している中に、自衛官が政府見解と異なる内容の論文を書いたこと自体を問題としているものが多く見られることには違和感がある。 論文の内容そのものについて歴史学や政治思想史の見地から検証・批…

筑紫哲也死去

私の人生において、こんなに悲しい訃報は初めてかもしれない。オバマが大統領選を制したことについてもコメントを聞きたいと思っていたところだった。ジャーナリストとしての輝かしい経歴は報道にある通りで、それも重要だが、私にとっては、理屈抜きの・根…

暴走族集会の自由

暴走族の集会などを規制した広島市暴走族追放条例の規定が「表現の自由」などを保障する憲法に違反するかが争われた刑事裁判の上告審判決で、最高裁第三小法廷(堀籠幸男裁判長)は18日、「違憲とまではいえない」との判断を示した。被告側は「暴走族以外…

参院選2007

与党惨敗・民主大勝。とりあえず,戦後史上最も強硬な右派政権だった安倍内閣の暴走にストップをかけたことの意義は大きい。有権者にその自覚があったかどうかは別にして,これで自民党主導の憲法改正は一旦遠のいた。しかし,民主党圧勝の陰で,共産党と社…

憲法選挙?

国民投票法が成立し,自民党は新憲法草案を掲げて参院選に挑むという。これに対し,民主党は,年金・医療・介護・地域間格差・雇用の方がはるかに切実な問題だとして,憲法問題については「テレビなどで聞かれれば答える」程度にとどめるという。思い出すの…

国民投票法案 衆院通過

衆議院を通過した国民投票法案には,問題点が2つある。前にも書いたが,くりかえす。1.最低投票率規定がない。 最低投票率の規定を設けて,それに満たなかった場合は投票全体を無効とし,改憲原案を廃案とするような手続を定めておいたほうがいい。国民の…

解釈改憲

安倍首相が,集団的自衛権の行使について研究するための新しい有識者会議を設置するらしいが,そのメンバーが,柳井俊二,北岡伸一,岡崎久彦……と実に偏っていて,力が抜けた。これはおそらくきわめて具体的な「行使のガイドライン」を策定するための会議で…

『産む機械』

厚生労働大臣の発言が,大いに叩かれている。 「女性は産む機械」という発言が,「女性は黙って産んでりゃいいんだ」という意味で為されたものであるならば,確かに「問題発言」であり,内閣不信任決議案まで視野に入れて,徹底的に叩くべきだと思う。 しか…

議員特権批判?

建て替え中の衆院赤坂議員宿舎(東京都港区)の完成を春に控え、若手議員を中心に入居を見送る動きが広がっている。国会に近い都心の一等地で、民間の5分の1と言われる低家賃が「議員特権」批判を浴びているためだ。民間マンションを借りるのを検討したり…

教育基本法改正

ついに教育基本法が改正された。制定以来,戦後教育の基本を支えてきた法律の初めての改正。国会の外に,積極的な賛成派は決して多くなかったが,結局は関心が集まらず,反対意見も小さなまま,実にあっけなく,改正されてしまった。 このあっけなさには,2…

「いじめ」

「いじめ」の問題に注目が集まっているときなので,簡単に触れておく。 「いじめ」と括られる行為の中には,傷害,暴行,強姦,脅迫,強要,窃盗,恐喝といった「犯罪」が多く含まれる。これらの行為が「やってはいけないこと」だということについては争いが…

核保有合憲説?

自民党の政調会長がこの時期に核保有論を口にしたことで様々な反響をよんでいるが,政府・自民党の憲法解釈の延長線上に核保有合憲説が控えていること自体は,そんなに驚くべきことでもない。 そもそも政府の憲法解釈によれば,日本国憲法9条が禁止している…

日の丸・君が代強制通達違憲判決(2)

「生徒に日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てるのは重要なことだ」 「しかし,懲戒処分をしてまで起立させ,斉唱させることは,行き過ぎた措置である」日頃,市民感…

日の丸・君が代強制通達違憲判決

卒業式や入学式などで、日の丸に向かって起立し、君が代を斉唱するよう義務付けた東京都教委の通達は違憲違法だとして、都立学校の教職員ら401人が義務がないことの確認などを求めた訴訟で、東京地裁は21日、原告全面勝訴の判決を言い渡した。難波孝一…

ビラ配布事件

マンションのドアポストに共産党のビラを配布していた住職が逮捕された事件で,東京地裁は昨日,無罪判決を言い渡した。「言論の自由が守られた」と評価する声も聞こえるが,そんなに単純な話でもない。まず,マンションの廊下など共用部分は公共空間ではな…

「靖国社」

麻生太郎外務大臣が今日発表した靖国神社「国営化」私案は,靖国神社を非宗教法人化することによって政教分離原則に「抜け道」を作ることができると考えている点に大きな問題がある。 別の話題で注目を集めている「摂理」が宗教法人でないことからも明らかな…

「再チャレンジ」(2)

安倍晋三は今日,経団連の御手洗会長と会談し,「再チャレンジ」政策への協力を要請した。具体的には,中途採用枠の拡大や産後女性の再雇用等を要請したらしい。一度「外れた」人が「再チャレンジ」できるよう「席を用意してほしい」ということだろう。 これ…

「再チャレンジ」

次期首相候補最有力の安倍晋三が,「格差社会」批判に対する回答として用意したキャッチフレーズが「再チャレンジ支援」である。これは,競争社会においては,「勝ち組」と「負け組」が一回戦で確定するわけではなく,二回戦も三回戦も四回戦もあり,戦いは…

昭和天皇発言メモ

A級戦犯の合祀以後,昭和天皇は靖国神社を参拝しなくなった。その理由について,ひとつの有力な証拠となる「宮内庁長官メモ」が公表されたことは,主に保守派の靖国論に一定の影響を及ぼし,分祀論者を勢いづかせる可能性がある。 但し,気をつけなければな…

医療扶助廃止

生活保護申請者で,自治体の医療助成制度などを活用しても生活が苦しい人は,社会福祉事務所などで発券する診療依頼書を持参すれば,窓口負担ゼロで診療を受けられるようになっている。この制度を医療扶助という。生活保護予算のほぼ半額(2006年予算で1兆4…

北朝鮮ミサイル発射実験

落ちついて考えたい。北朝鮮がミサイル発射実験を行い,その全てが日本海のロシア寄りに落下した今回の出来事から,何が言えるか。ひとつは「日本に実害があったかといえば幸い何もなかった」ということであり,もうひとつは「こんな危なっかしいことは絶対…

滋賀県知事選

全く注意を払っていなかったので驚いた。滋賀県でいったい何が起こったのだろうか。自民・民主・公明の推薦を得た現職候補を破って,社民党が支持する新人候補・嘉田由紀子氏が当選を果たした。 嘉田由紀子氏は京都精華大学・環境社会学科の教授で,琵琶湖研…

国民投票法案上程(2)

自民党案よりは民主党案のほうが「まし」だと思う。その理由は,以下の2点。 自民党案は,公務員の投票運動を過度に広汎に制限している。 「過半数」の分母を,自民党案が「有効投票総数」としているのに対して,民主党は「投票総数」としている。 しかし,…

国民投票法案上程

以下,民主党談話。 民主党憲法調査会長 枝野 幸男 民主党は26日午後、国民投票法案(「日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案」)を衆議院に提出しました。法案は、日本国憲法第96条に定める憲法…

自民党新憲法草案(6)

第4章(国会)の改正は小幅で,国会制度の大枠はほとんど変わらない。 注意すべき点は,内閣の解散権を明記したこと(54条),大臣の出席義務緩和(63条2項),政党条項の追加(64条の2)に加えて,定足数条項の変更がある。 56条2項 両議院の議…

“愛国心”

教育基本法改正に関連して,“愛国心”という概念をめぐる様々な見解が飛び交っている。気になるのは,愛国教育への懸念に配慮して,「愛国心といったときの“国”とは,国家・政府という意味ではなく,郷土や文化・伝統のことである」というような説明がなされ…