「再チャレンジ」

次期首相候補最有力の安倍晋三が,「格差社会」批判に対する回答として用意したキャッチフレーズが「再チャレンジ支援」である。これは,競争社会においては,「勝ち組」と「負け組」が一回戦で確定するわけではなく,二回戦も三回戦も四回戦もあり,戦いは延々と続きチャンスは何度でもあるという認識の下,「下」が「上」を目指して再チャレンジするのを支援しようとするものである。負けてもへこたれるな,何度でも挑戦せよ,というメッセージに,勇気付けられる人もいるだろうが,逆にげんなりする人もいるだろう。
小泉後継としての安倍晋三は,「上」から「下」への再分配によって「格差」そのものを是正しようとする立場ではなく,競争を促進していつでも「上」と「下」が入れ替わる可能性を確保し,市場を常に緊張感あるものにしておこうとする立場に軸足を置いているものと考えられる。まさに小泉後継としては正統である。
「格差」については,それが「固定化」されることを避けなければならないという良識的な発言が一般によく聞かれるが,そのための施策が「再チャレンジ支援」だとするならば,あまりに頼りない。「下」の努力によって格差の固定化が回避されると考えるのは,あまりに楽天的である。