暴走族集会の自由

 暴走族の集会などを規制した広島市暴走族追放条例の規定が「表現の自由」などを保障する憲法に違反するかが争われた刑事裁判の上告審判決で、最高裁第三小法廷(堀籠幸男裁判長)は18日、「違憲とまではいえない」との判断を示した。被告側は「暴走族以外に広く規制が及ぶ恐れがある」と主張したが、第三小法廷は「条例全体をみると対象は暴走族とそれに類似する集団に限られ、規制の目的や手段も合理的だ」と述べた。

 結論は5裁判官のうち堀籠裁判長と那須弘平近藤崇晴の両裁判官による多数意見。藤田宙靖田原睦夫の2裁判官が「条例は違憲」とする反対意見を述べた。

 条例は、市中心部の広場や公園で多くの若者が暴走族などのグループ名を刺繍(ししゅう)した「特攻服」を着て、繰り返し円陣を組んだり、大声を出したりしたことへの対策として02年4月に施行された。「何人も公共の場所で許可を得ずに、公衆に不安または恐怖を覚えさせる集会をしてはならない」と定め、市が中止・退去命令を出しても従わなかった場合に刑事罰を科すとした。

 第三小法廷は「規定の仕方が適切でなく、条例が文言どおりに適用されると、規制の対象が広範囲に及び、憲法上問題がある」と指摘。そのうえで「全体から読み取れば規制対象は暴走族のほか、服装、旗、言動などにおいて暴走族に類似し、社会通念上同視できる集団に限られる」と限定的に解釈し、「合憲」とした。

 藤田裁判官は「表現の自由は最大限保障されなければならない。条例は粗雑で、最高裁が強引な解釈をして合憲とすることには重大な疑念がある」と改正を求めた。田原裁判官も「多くの市民に対し、限定解釈の枠を超えて適用される可能性があると萎縮(いしゅく)的に行動させる効果をもたらしかねない」と指摘した。

 争っていたのは、この条例に違反したとしてただ一人起訴された元暴走族の男性被告(27)。第三小法廷が上告を棄却したため、懲役4カ月執行猶予3年が確定する。(朝日新聞より)

 「集会の自由は,暴走族集会の自由まで含むものではない」というトンデモ判決。このロジックを使えば,「集会の自由は,共産主義者集会の自由まで含むものではない」とか,「集会の自由は,新興宗教信者集会の自由まで含むものではない」とか,いくらでも規制対象を作り上げては,自由の範囲を狭めることができるだろう。
 例えば,「○○公園での集会は禁止する」といった場所規制や,「22時以降の集会は禁止する」などの時間規制なら,他の権利との調整という理由で,受け入れざるを得ない場合が想定できる。しかし,「暴走族の集会は禁止する」というような,集会の目的そのものを特定する規制は,最もあってはならない規制だと言うべきである。これを認めれば,少数意見はいとも簡単に封殺され,民意が歪められてしまう。言うまでもなく,集会の自由は,「表現の自由」の一類型である。
 裁判所は,国会を通じて代表されにくい少数派の自由や権利を憲法の精神に沿って守ることが任務だと再認識し,世の中の「かわりもの」や「へんなやつ」にこそ手を差し伸べるべきである。暴走族のような,多くの人に理解されにくい「表現」に,いかにして場を与えるか。多数派と一緒になって叩き潰す側に回ってしまうのなら,裁判所なんて存在する意味がない。