筑紫哲也死去

 私の人生において、こんなに悲しい訃報は初めてかもしれない。オバマが大統領選を制したことについてもコメントを聞きたいと思っていたところだった。ジャーナリストとしての輝かしい経歴は報道にある通りで、それも重要だが、私にとっては、理屈抜きの・根っからの・すっぴんのリベラリストとして、常に参照する大きな星だった。
 いま現在、マスメディアの中に筑紫哲也の代わりになる人材が見当たらない。専門知識の豊富な人や、理論に精通した人や、話術巧みな人はいるだろう。しかし、あの全身から滲み出るような、生きたリベラリズムを見せてくれる人がいない。だからこそ、喪失感が大きい。そして、不安にもなる。
 一言でいえば、ああいう人になりたいと、思わせる力のある存在だった。筑紫哲也に影響を受けた多くの人が、世界のあちこちで、多事争論を繰り広げ、自由の気風を育むこと。それが、彼のメッセージを受け止める、小さくても確かなやりかただと思う。