解釈改憲

安倍首相が,集団的自衛権の行使について研究するための新しい有識者会議を設置するらしいが,そのメンバーが,柳井俊二北岡伸一岡崎久彦……と実に偏っていて,力が抜けた。これはおそらくきわめて具体的な「行使のガイドライン」を策定するための会議で,主に法技術的な問題を論議する場となるのだろうが,はたして,理念対立の段階をこうもあっさり乗り越えて(乗り越えさせて)しまっていいのだろうか。私たちは,まだ,各論に入る手前で片付けなければならない問題を,いっぱい抱えたままなのではなかったか。解釈改憲は,憲法典の改正に比べるとずいぶんハードルが低いので,政府の動きが加速化することに危機感を抱く。
世界平和への極めて困難な道のりにおいて,日本国憲法9条がもつ世界史的な意味を考えることは,何度くりかえしても足りることがないほどに重要だ。現実の国際社会において,戦争をなくすことなんてできるはずがないと考えるからこそ,最も強い抑止力として「9条」は重い意味をもつ。この重しを取り除いてしまえば,戦争を抑止・統制することがいま以上に難しくなるのは明らかだ。そのことに誰がどのように責任を負うのだろうか。
敵は戦争だ。甘くみないほうがいい。