国民投票法案上程(2)

自民党案よりは民主党案のほうが「まし」だと思う。その理由は,以下の2点。

  • 自民党案は,公務員の投票運動を過度に広汎に制限している。
  • 過半数」の分母を,自民党案が「有効投票総数」としているのに対して,民主党は「投票総数」としている。

しかし,民主党案も,このままでは賛成できない。その理由は,3つある。
まず投票方式。現行の最高裁判事国民審査と同じように,賛成の場合は「○」,反対の場合は無記入とする方式を採用しているが,私は,賛成でも反対でも,「記号を記入する」という行為を同じように求める方式が公平ではないかと思うので,この点では,賛成の場合は「○」,反対の場合は「×」を記入する方式を採用した自民党案のほうが妥当だと考える(但し,自民党案は,無記入無効投票を「過半数」の分母から除外してしまうので,賛成できない)。
次に投票の効果について。有効投票総数の過半数で国民の承認を得たものと考える自民党案よりは,投票総数の過半数を求める民主党案のほうがまだ「まし」だが,しかし,投票率に関する規定がないため賛成できない。少ない投票者のうちの過半数の賛成を得たところで,それを国民の承認と認めてよいか,疑問が残る。最低投票率の規定を設けて,それに満たなかった場合は,投票全体を無効とし,改憲原案を廃案とするような手続を定めておくべきではないだろうか。国民の広く・確かな支持がないとき,権力側の発案で憲法を改正することには慎重でなければならないと考えるのが,立憲主義的だと思う。
そして広告放送制限。自民党案も民主党案もこの点では一致していて,投票日直前の1週間に限って,投票に関する広告放送(CM)を禁止している。
これについては,例え1週間であっても表現の自由を制約すべきでないという批判と,全く逆に,資金力の差によって議論状況が歪められないように1週間と言わずもっと長期間にわたってCMを禁止すべきだという異論がある。後者は,きわめて現実的な問題を指摘していて傾聴に値するが,しかし私は,やはり前者の発想を大切にしたい。憲法論議の内容はもちろんのこと,見解を表明する時・場所・方法についてもできるだけ制約を課すべきではないと考える。
また,仮にCMを制限したとしても,番組スポンサーの意向を反映した放送内容になることを考えれば,(制限の)効果は限定的なものとならざるを得ないし,逆に番組内での言論にまで制限が及ぶ(作り手が「萎縮」する)ようなことになれば,国民は少ない情報をもとにして判断しなければならなくなる。それこそ最も避けなければならない事態だ。

以上3点の理由により,民主党案に(も)賛成できない。