2005-01-01から1年間の記事一覧

憲法本

憲法記念日前日,憲法に関する推薦図書をいくつか。 条文そのものをじっくり読みたいときには, 『日本国憲法』(小学館)isbn:4093946116 『日本国憲法』(童話屋)isbn:4887470142 『あたらしい憲法のはなし』(童話屋)isbn:4887470150 憲法学者による理…

国籍法違憲判決

昨日の東京地裁判決は,非嫡出子(婚外子)差別の是正に向けて裁判所が一歩前進してみせたものと評価できる。問題となったのは,国籍法3条1項の国籍取得要件である。 国籍法3条1項 父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満…

生徒の自由

卒業式の季節,例によって「君が代」をめぐる攻防が注目されたが,国歌斉唱を拒否する自由がなぜ認められないのかについて,説得力のある議論はまだ聞こえてこない。 学校という場においては,教師が生徒に何かを「やらせてみる」ということが,教育上必要と…

環境権(2)

護憲を看板とする社民党でさえ,環境権などの「新しい人権」を憲法に盛り込もうとする運動に対しては,一定の理解を示している。 (http://www5.sdp.or.jp/central/topics/kenpou0310.html) 憲法論議全体の中で,この「新しい人権」論ほど広い支持を得てい…

「中間報告」

自民党の新憲法起草委員会は,試案策定に向けた「中間報告」(論点整理)をまとめた。各小委員会の議論を集約,整理したものである。 【前文】 全面改定 自然にはぐくまれた国民性 日本の歴史,伝統,文化 独立と安全を守る意思 権利には義務,自由には責任…

平和的生存権

自民党は新憲法の起草において「前文」の全面的な書き換えを目指している。個人的には今の前文のゴツゴツした調子が好きだが,もっと読みやすくわかりやすい文章のほうがいいという意見には譲らなければならないのかもしれない。 さて,問題は中身である。日…

環境権

船田試案が列挙した課題は,そのひとつひとつが重要な論点であり,多くの議論を必要とするはずのものであるのに,いずれも現代日本が抱えるさまざまな不安や不満に対して,とりあえず何らかの効果をもちそうな,ある程度「たよりがいのある」政策を期待させ…

生命倫理と憲法

国連は,クローン人間の技術を(医療目的も含めて)全面的に禁止するよう求める政治宣言を採択した(http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20050219/eve_____kok_____001.shtml)。日本は,医療目的のクローン胚研究を認める「部分禁止」を主張して反対に回った…

船田試案

自民党の新憲法起草委員会は,各「小委員会」の会合を続けているが,そのうち「国民の権利・義務」小委員会では,委員長の船田元が,「家族の保護」を国民の「責務」とする等,多くの問題を孕んだ「試案」を提示した。産経新聞によれば,船田試案の主な内容…

「家族の保護」

自民党の新憲法起草委員会で,「家族の保護」を国民の責務とする方向が打ち出されている( http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20050211k0000m010106000c.html)。 これは自民党の改憲運動が,単に9条,国防制度の改変を目指すだけのものでな…

『広告批評』のファイティング・ポーズ

『広告批評』2・3月合併号(マドラ出版)が,憲法9条の特集を組んでいる。中身は4部構成。まず池澤夏樹・大塚英志・高橋源一郎による鼎談,次に編集部によるデータ集(先日放送されたばかりのNHKスペシャル「シリーズ・憲法」からも引用されている),そし…

人権擁護法案

主に「メディア規制法」となる可能性のある部分について反発が強く,一旦は廃案となった「人権擁護法案」(http://www.moj.go.jp/HOUAN/JINKENYOUGO/refer02.html)が,いまの国会に改めて上程されることになった。 法案の中身を確認しておきたい。 まずこの…

北朝鮮民主化計画

社会学者・大澤真幸は,新刊『現実の向こう』(isbn:4393332288)の中で,約100頁を割いて「憲法の話」をしている。「ただ消極的に護憲を叫ぶのではだめ」という立場から,「日本国憲法の根本的な弱点」をはっきりさせた上で,いくつかの「積極的」な提案をし…

沖縄靖国訴訟

今日の那覇地裁判決は,参拝の「公的性格」や「宗教性」を審査することなく,きわめて「簡単」に,首相の靖国参拝が原告の「信教の自由」を侵害したとはいえないと判断した。全面的な原告敗訴である(http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20050128/eve_____sei…

東京都国籍条項訴訟

東京都が在日韓国人2世の職員(保健師)に対して,「国籍」を理由に管理職試験の受験を拒否した事件で,最高裁は都の判断が法の下の平等を定めた憲法14条に反するものではないとして,外国人の公務就任権に関する地方自治体の裁量権を幅広く認める,「合憲…

淫行処罰規定

中学生以下の性交渉を条例で「禁止」するかどうかを検討していた東京都青少年問題協議会が,緊急答申をまとめた(http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2005/01/25/20050125ddlk13010246000c.html)。 一律禁止は見送ったが,大人と青少年(18歳…

毎日新聞による論点整理

通常国会召集の今日,毎日新聞は見開きで「どうなる憲法改正」という特集を組んだ。それによると,国会における憲法論議の焦点は,以下のようにまとめられる。 9条改正の条件闘争 「国際貢献」の明記については自民・民主・公明が一致。 海外での武力行使を…

中曽根試案

中曽根元首相が会長を務める世界平和研究所は20日、全116条からなる「憲法改正試案」を発表した。天皇を元首と定めたほか、焦点の9条改正では、「戦争放棄」は維持しつつ、防衛軍の保持を明記、国際貢献活動への防衛軍の参加を認めた。中曽根氏は自民…

逃避としての改憲論

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から難民(マンデート難民)と認められる一方、日本政府には認定されずに支援を求めていたトルコ国籍のクルド人、アハメッド・カザンキランさん(49)と長男ラマザンさん(20)が18日、法務省入国管理局によっ…

1995年以後

すっかり忘れていたが,明日1月17日は阪神大震災の日。あれから10年経ったことになる。1995年といえば,私が大学を卒業して就職した年でもあり,個人的にも,ひとつの大きな節目の年だったような気がする。 あれから10年の間にあったことを,「憲法問題」に…

教育基本法

すべての法律は憲法の下位法であり,憲法に反する法律は存し得ないが,教育基本法ほど日本国憲法の「精神」をよく反映した法律もない。特にその「前文」「第1条」「第2条」は,法律の一般的に抱かれるであろう冷たく味気ない文章というイメージとは正反対…

尊厳死

自民、公明両党は9日、死期が近く回復の見込みがない患者に積極的な延命治療を施さない「尊厳死」の容認に向けた与党協議機関(会長、丹羽雄哉元厚相)を近く新設し、法整備やガイドラインづくりに着手する方針を固めた。尊厳死は現在法律上の規定がないが…

戦争放棄は堅持?

東京新聞(http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20050109/mng_____sei_____001.shtml)によれば,自民党は憲法改正草案の安全保障分野で,「戦争放棄」「自衛権」「国際貢献」の3項目を明記する方向で調整に入ったという。 日本国憲法 9条 日本国民は,正義…

国民投票法案(2)

「憲法調査推進議連」(http://www1.sphere.ne.jp/KENPOU/)が2001年に作成した「日本国憲法改正国民投票法案」は,だいたい以下のような内容になっている(今度の国会に与党が提出する法案は,この議連案をベースにしているというが,全く同じなのか,ある…

国民投票法案

日本国憲法の改正手続は,96条によって以下のように定められている。 日本国憲法 96条 この憲法の改正は,各議院の総議員の3分の2以上の賛成で,国会が,これを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には,特別の国民投票又は国会…

自衛隊の海外活動

思いっきり素朴に言ってしまえば,多くの人が「平和に暮らしたい」と思っている。だから日本国憲法前文にある「平和のうちに生存する権利」を国家が保障してくれるというのなら,「なかなかいい国じゃないか」ということになるだろう。 しかしそのために「陸…

目的効果基準(2)

「津地鎮祭訴訟」で最高裁が示した「目的効果基準」は, 目的が世俗的で, 宗教に対するプラス/マイナスの効果がないとき, 国家と宗教の間に「関係」があってもそれは「合憲」だとするものである。 確かに国家と宗教の間に一切の「関係」を認めない「徹底…

目的効果基準

今日は憲法の教科書を開いて,政教分離に関するリーディング・ケース「津地鎮祭訴訟」の最高裁判決を確認しておきたい。 1965年,三重県津市が体育館の起工式で行なわれた神式の地鎮祭に公費(7663円)を支出した。ある市議会議員を中心にした市民グループは…

宗教的活動

今日,小泉首相が伊勢神宮を参拝した。靖国神社の場合と違って,これはあまり騒がれないが,もしもこれが「公的」参拝なのだとすれば,やはり政教分離原則に反するものだと思う。 戦争責任の問題が絡んで複雑な靖国論争に比べると,伊勢神宮の場合は,そもそ…

政教分離

自民党が昨年11月に発表し(党内事情によりすぐに撤回し)た「新憲法草案大綱の素案」には,修正すべき権利規定として,「政教分離」が掲げられている。この素案の前提となる自民党憲法調査会による「論点整理」には,「政教分離規定(現憲法20条3項)を…