戦争放棄は堅持?

 東京新聞http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20050109/mng_____sei_____001.shtml)によれば,自民党憲法改正草案の安全保障分野で,「戦争放棄」「自衛権」「国際貢献」の3項目を明記する方向で調整に入ったという。

日本国憲法 9条

  1. 日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。国の交戦権は,これを認めない。

 現行9条1項を基本的に堅持する一方で,2項を全面的に改め,「必要最小限度の戦力を保持する」との表現で「自衛権」を明記する(集団的自衛権については検討中)。
 さらに,「国際社会の平和と安全の維持,人道的支援のための国際的な共同活動に積極的に参加する」と明記して,国際貢献を「憲法上の国是」とするつもりのようだ。
 これは現政権の安全保障政策を憲法に「追認」させるようなものだが,敢えて「改憲」を前提とした議論に乗っかれば,「武力の行使」を「永久に」「放棄する」との規定を残しながら,自衛のための「戦力」を保持するというからには,いったいどういう場合にその「戦力」の「行使」が認められるのかについて,憲法上の「縛り」をかけておくべきではないだろうか。そうでないと,現行2項のように戦力不保持を規定した場合と違って,1項の「戦争放棄」の意味が,ほとんど失われてしまうように思える。例えば,「自衛のための先制攻撃」は禁止されるのか許容されるのか。
 また,「国際的な共同活動」が「平和と安全の維持」のため,あるいは「人道的」な理由により,武力行使を必要とする場合,これにも「積極的に参加する」のだとすれば,「国際紛争を解決する手段として」「武力の行使」を「放棄する」という1項と矛盾する。せっかく新しい憲法を創ろうとしているのに,こんなにあからさまな矛盾をわざわざ抱え込む必要はない。もっとすっきりとわかりやすい,誰が読んでもその意味するところを理解できる改正案を練るべきだ。これは,戦争放棄条項を破棄すべきだという主張ではない。何ができ,何ができないのか,それを「あいまい」にしたままの9条改正には反対だということである。