毎日新聞による論点整理

 通常国会召集の今日,毎日新聞は見開きで「どうなる憲法改正」という特集を組んだ。それによると,国会における憲法論議の焦点は,以下のようにまとめられる。

  1. 9条改正の条件闘争
    • 国際貢献」の明記については自民・民主・公明が一致。
    • 海外での武力行使を「どのような条件下で」容認するか。
    • 集団的自衛権の行使を「どのような条件下で」容認するか。
    • 「米軍支援」中心か「国際協調」中心か。
  2. 女性天皇
  3. 参議院
  4. 国民の義務
    • 家族扶助義務,国防義務,(国民の)憲法尊重義務等の追加を検討(自民党)。
    • 民主・社民・共産は義務創設に反対。
  5. 新しい人権

 これを読むと,9条を改正するかしないかがほとんど唯一の争点だった憲法論議は既に過去のものとなっているように思えてくる。9条の改正自体は決まっていて,焦点は「条件闘争」に移っているというこの記事は,静かに,しかし大胆に,世論を「改憲」の方へ誘導するだろう。
 国会の議席分布を踏まえていえば,自民・民主・公明の意見が一致している問題については事実上の争点にならないから,毎日新聞としては,「国民の義務を新たに創設するか否か」を最大の争点として浮上させようとしているのかもしれない。
 確かに,「国家を縛るルール」から「国民支配のための道具」へと憲法を変質させようとする自民党改憲論には危険が多い。国家と国民の関係をどうとらえ,憲法にどう反映させるかは,個別の条文に関する議論とは別に,しっかりと踏まえておかなければならない憲法論の本質といってよく,世論の関心をそちらに向けさせようとする意図があるのであれば,毎日新聞の判断はなかなかに賢いと言えなくもない。
 ただ,その本質論を踏まえた上で,憲法に「国家を縛る」働きを期待するのなら,9条についても,やはり「縄を解くべきでない」という判断が導かれる余地がある。その連関が示されていないのは,9条論として不十分,または議論を急ぎすぎたものと言わざるを得ない。