「家族の保護」

 自民党の新憲法起草委員会で,「家族の保護」を国民の責務とする方向が打ち出されている(
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20050211k0000m010106000c.html)。
 これは自民党改憲運動が,単に9条,国防制度の改変を目指すだけのものでなく,もっと根深く全面的な,道徳運動であることを示す最もわかりやすい例である。そしてもちろんそのことは,国防制度の改変を下から支えるものとして期待されているのだろう。
 私はこの問題,つまり「個人の尊重」をどこまで貫けるかが,日本国憲法体制を護ろうとする者にとって,最重要の焦点だと思っている。その意味では,日本国憲法のことを「平和憲法」と呼んで,護憲運動のエネルギーを「9条堅持」に集中させてしまうのは,問題を小さく限定しすぎているような気がしてならない。平和運動に取り組んでいる人たちは,もっと強く,平和とは単に戦争がない状態をいうのではないということを主張すべきではないだろうか。
 だいたい,幼児虐待など,家族の中で「人権」が奪われている実態が,次々に露呈している現代において,「個人主義が利己主義に変質し、家族や共同体の破壊につながった」という自民党の説明では,問題解決の入口にさえ全く手が届かない。ここで「保護」されるべきは,「家族」という枠組ではなく,あくまで「個人」の生命や自由であることを,いまいちど確認しておく必要がある。